生命保険会社や保険代理店の皆さんにもご理解いただきたいこと
国民の9割近くが加入している生命保険。一家の大黒柱を失った時に死亡保険金がお役に立ったり、がんの治療をする人ががん保険の給付金で安心して治療に専念できる、など社会的意義はとても大きいと思います。
一方、私たちには社会保険制度があります。それゆえに、国民が「最低限の安心を感じることができる」とは言えますが、誰もが同じ環境で生活していたり、同じような困り事を経験するわけではないので、自分の生活環境などに合致した保障プランを持つことも、社会保障制度と同程度に大事だと思います。
では、そのようなことまでを考慮して、その人に合った保障プランを構築できているでしょうか?
もし、それが実現できてないならば、保険に加入していても、まさに「加入しているとは言い難い」状態に置かれているともいえると思います。
知的障害・発達障害のある人の親御さんの不安を、本当にカバーできているか?
私は福祉FPとして、一般的な家計相談以外に、知的障害や発達障害のある人がいるご家庭の保険相談にもとりくんできました。
そこで感じたことは「障害があるお子さんがいるご家庭の保険商品の勧められ方が、一般のご家庭とほぼ変わらない」という現実でした。
言い換えるならば、20,000円の大事なお金の使い方を、障害のあるお子さんがいる方に「きちんとアドバイスできていない」ということです。
保障の無駄を無くして、合理的に生命保険をかけることが保険代理店に求められているアドバイスであるにも関わらず、お子さんに知的障害や発達障害がある場合の保障の考え方と、一般的なご家庭の保障の考え方が同じになっているわけですが、これではせっかくの20,000円を「合理的に使っている」とは言いがたいと思います。
障害があるお子さんがいる場合の提案のポイントとは?
では、実際にはどのようなポイントに気をつけて提案すればいいのでしょうか?
いくつかのポイントをお示ししてみます。
- 療育手帳をもっていたり、障害年金を受給しているお子さんがいる場合、特別な共済制度を活用しているケースが多いのでそれを考慮した死亡保障を構築すること
- 一般的なご家庭のケースのような「子の経済的自立」が難しいので、お子さんが一生お金に困らないように対策を打つ(親亡き後の対策とも言います)ためにどう活用するか?
- きょうだいの状況によっては「相続争い」が起こりえるので、それを防ぐために活用する
- ひとり親のケースでは、親の終活を考慮した第三分野商品の選択がポイントとなる
- 親のライフプランを実現して、さらに障害のあるお子さんのライフプラン実現まで見据えた、生命保険提案がなされると喜ばれる
ちなみに、これらを形づくるために新しい生命保険商品が必要なわけではなく、既存の商品をどう活かすかという視点があれば、障害のあるお子さんがいるご家庭の不安やリスクに十分対応できます。
ただ、これらのことを知る機会が無いので、実際の保険提案の現場ではありがちな提案になってしまうと思います。
だからこそ、学んで、実践して欲しいと思うのです
幸いにも私には「障害者とお金」の講演をしてきた経験があります。
また、生活困窮者自立支援事業の家計相談を受け持つことで、知的障害や発達障害のあるお子さんがいるご家庭が、親亡きあとや親御さんがご高齢になられた時までに、何の経済的対策を打たなかったばかりにどのような結果になっているか、という現実も沢山みてきました。
それらの経験を「親御さん」にも話し続けてまいりますが、生命保険に関わる関係者の皆さんにも是非とも学んでいただき、社会的役割を果たしていただきたいと思います。
そうすることで、保険会社はもちろん、保険代理店や募集人の方が本当の意味での「安心」をもたらす事ができるのではと考えます。
福祉FPとしての私の夢
私が数年間で気付いてきた経験を、いわばライバルにあたる方たちにお話したいと思うのには理由があります。
それは「障害者支援を、一般的なことにしたい」とう理念からです。
私が一人で日本中の親御さんに生命保険を提案できるわけがありませんし、それを目指してもいません。
私がお話した「考え方」を正しく実践してくださ保険募集人さんが日本中に増えてくれれば、それで私の役目は果たせると考えています。
ですから、皆さん、ともに学び、実践していこうではありませんか?