私は障害者支援をしていますが、時々「精神障がいのある子どもの医療保険」のことを、親御さんから訊かれます。
質問の内容は
- 精神疾患があるが、医療保険は加入しておいたほうがいいですか?
- そもそも精神疾患があるのに、満足な内容の医療保険に入れるでしょうか?
というふたつに大別されます。
まずはじめの「医療保険は要りますか?」について考えてみます。
なぜこう考えるかと言うと、親御さんやご本人としては
「子どもがこの精神疾患で長期間入院したらどうしよう?」
「この精神疾患以外の病気で、お金がかかる状態になったらどうしよう?」
という不安があるのだと思います。
ただ、大前提として明らかにしておきたいのは
その人が、今後、どんな病気にかかるかはわからない
ということです。
だから保険がいるんだよ、というご意見が寄せられるでしょうが、だからこそ安易な、押し付けの、保険提案はしないということを生命保険を扱う募集人さんや保険代理店の人は胸に刻み込んでいて欲しいと思います。
つまり、精神疾患を患っている方の「家計の状況」「就業の状況」「貯蓄の状態」「精神疾患の状態と今後の見通し」を十分に話し合い、そして、最後に当人さんや親御さんの「価値観」を考慮してから、加入するかどうするかを決めて欲しいと思います。
なぜなら、精神疾患があると、おそらくご本人の収入は「障害年金」を除いては安定しにくいと思われますし、保険料がその人にとっては重い「経済的な負担」となる可能性もあるからです。
ここで「医療保険が必要になる状態」について少し整理をしてみましょう。
1 今の精神疾患が重くなり、入院を余儀なくされる
これはありえる話ですが、こうなるかどうかはわかりませんね。
もし、数ヶ月入院することになれば、一日5,000円支払われる医療保険ならば90日間で45万円が保険会社から入金されるでしょう。
しかし、注意していただきたいのは、一つのご病気で継続して60日間しか入院できない内容の医療保険ならば、先ほどの例では45万円ではなく、30万円が上限となります。
(保険会社の説明では、継続しての入院という表現ではなく、いち入院という表現を使います)
例えば、この「60日間の枠」を統合失調症などで使いきった場合は、その入院が終了して退院した日の翌日から「180日間」経過後に、再度統合失調症で入院した場合は、もういちど60日間の枠をフルに使えます。
ですから、統合失調症で60日を越えて入院をしてしまい、退院の見通しがつかない、という本当に困り果てた状態になると、民間の医療保険では限界がある、といえます。
そんな時でもあなたのチカラになるのが、社会保障制度の健康保険制度や、自立支援医療の精神通院医療の支給制度、です。
2 他の病気でお金がかかることになったらどうしよう?
これもありえない話ではありません。
がんや糖尿病、人工透析の治療費は継続して発生しますので、医療費負担が気になるのは理解できます。
しかし、健康保険制度の高額療養費制度などを使うことで、大きな医療費負担は避けられるのが一般的です。
それでも心配というならば、がん保険などで「一番困りそうな事態」にだけ備えるということも考えられます。
では、二つ目の疑問である「精神疾患がある方」が満足な内容に加入できますか?、については、次の機会に書いてみたいと思います。
皆さんには、他の国にはないような社会保険制度があります。
それにプラスして、あなたや親御さんが、毎月高額な保険料を負担して、持病の精神疾患の入院に備えるという選択枝は、単なる「医療保険によるリスク対策」というよりは、「せめて医療保険ぐらい加入していきたい」というお気持ちからかもしれませんね。
私が精神疾患の治療をしている当人さんや親御さんからのご相談から感じるのは、その「せめて」というお気持ちを、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーがよくやる保険料から考える費用対効果みたいな発想で判断するのはいかがなものか?ということです。
しかし、お金の専門家としては、明らかな「無駄な出費」を見過ごす事もできず、大変難しいアドバイスになります。
もし、あなたのお知り合いの保険代理店の方や、保険募集人の方が
「それは心配ですね、さあさあこの保険なら加入できますよ」
なんていう軽さで保険提案するならば、一度立ち止まって考えてみる事が、あなたの大事な「資産」「貯金」「お金」を守ることになるのではないでしょうか?
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